予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
社会全体で考える早期介入 ~統合失調症への早期介入からメンタルヘルスへの早期支援へ(行政分野から)
岡本 秀行岡本 浩二
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2024 年 9 巻 1 号 p. 60-66

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抄録
川口市は平成30年4月の中核市に移行に伴い、川口市保健所(以下、市保健所とする)を開設し、精神保健に関する業務を行っている。市保健所では予防的な視点を重視し、積極的に保健所から働きかけ、早期支援を行うことで市民のメンタルヘルス課題の重症化予防を意識していることが特徴である。 市保健所における早期支援の取り組みは大きく分けて三つに分類される。第一に相談支援である。「こころの健康」に関する一次相談先としての役割を担い、本人、家族及び関係機関からの相談を受け、訪問支援、来所面接、電話相談による支援を行っている。その際、市職員の直接的支援や各種事業における関係機関との協働による支援を活用し、可能な限り現場に出向き、支援を必要としている方に直接会うことを重視している。 第二に普及啓発の取り組みである。支援を必要としている方に必要な知識や情報を届けることで、「こころの健康」の保持や早期支援につなげる取り組みを行っている。 第三に地域づくりである。市保健所のみで支援を完結させることは困難であり、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を目指し、地域全体が協働する仕組みが必要となる。地域全体のメンタルヘルスリテラシーを高めることで、支援を必要とする方を早期に発見し、支援につなげることができると期待される。 本市の実践から、行政が保健予防の視点を持ち、早期支援に取り組むことの意義や有効性を報告する。
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© 2024 日本精神保健・予防学会
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