抄録
最近の小切開前立腺全摘除術において腫瘍の位置と前立腺周囲筋膜との解剖学的関係から筋膜温存が可能と考えられる症例について筋膜間剥離前立腺全摘除術を行った.
両側筋膜間剥離前立腺全摘除術 11例と片側筋膜間剥離前立腺全摘除術 10例,両側筋膜外剥離前立腺全摘除術24例の年齢,PSA値,生検Gleason score,臨床病期に有意差なく,手術時間,出血量にも有意差はなかった.各手術症例の病理学的病期および外科的切除断端陽性率に違いはなかった.尿漏れPad非使用率は,両側筋膜間剥離手術,片側筋膜間剥離手術,両側筋膜外剥離手術とでそれぞれ3か月後に73%,80%,28%,6か月後に90%,91%,63%であった.観察期間1-24ヵ月(中央値12ヵ月)での生化学的再発率はそれぞれ0%,0%,8%であった.
このことから,腫瘍の解剖学的位置や進展度から片側,両側の筋膜温存手技を使い分けることが可能であり,片側温存でも良好な尿禁制の回復が期待できると考えられた.