抄録
ヨウ素125シード線源を用いた前立腺小線源治療(ブラキセラピー)が本邦で開始され10年目を迎えた.新しい根治療法が加わり,治療成績のみならず治療後のQOL(quality of life)を含めた総合的な見地からの治療選択が必要である.手術,外部照射およびブラキセラピーには,それぞれ特有の有害事象があり,治療後QOLの変化もそれぞれ異なる経過を示す.ブラキセラピー後にみられる特徴的な有害事象の一つは,尿路刺激症状でありQOLに大きく影響を与える.疾患特異的QOL調査票のEPIC(The extended prostate cancer index composite)を用いた検討では,排尿に関する下位尺度の中で,排尿刺激・下部尿路閉塞スコアがブラキセラピー後に著明に低下することが知られており,手術や外部照射と比較してもこの傾向は特徴的である.一方,排便に関するQOLスコアは外部照射で最も低く,性機能に関するスコアは手術が最も低い.性機能温存について,ブラキセラピーは他の治療法と比較して最も良好であるのが特徴である.ブラキセラピー後の長期QOLは比較的良好であり,排尿刺激と排便に関するスコアは改善を示す.一方,尿失禁のスコアは外部照射と同様に低下する傾向がある.今後,手術および外部照射と並んでブラキセラピーは,根治療法の一翼を担っていくことが期待されるが,ブラキセラピー特有の有害事象とQOL変化を十分に把握した上で治療選択を行うことが肝要である.