Japanese Journal of Endourology
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特集3:腎盂形成術
序文
柿崎 秀宏
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2013 年 26 巻 2 号 p. 210

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抄録

  腎盂形成術には泌尿器科における再建・形成手術の重要なポイントがすべて含まれている.腎盂から上部尿管まで組織の血流に留意しながら丁寧に剥離し,必要に応じて異常血管の剥離操作を行い,通過障害となっている病変部位を切除し,緊張がかからない状態でfineな糸で粘膜が外反しないように縫合を行う.これらが腎盂形成術のポイントであり,粘膜縫合の際には,粘膜自体を手術器具で保持しないnon-touch methodが理想的である.経験を積んだ小児泌尿器科医が小児の腎盂形成術を開放手術で行う場合,サージカルルーペを使用して小さな皮膚切開で腎盂形成術の重要なポイントを忠実に順守して手術を遂行することが可能であり,手術成績もきわめて良好である.腹腔鏡手術の普及により,成人に対する腹腔鏡下腎盂形成術は多くの施設で施行されるようになり,小児に対する腹腔鏡下腎盂形成術の経験も蓄積されつつある.これまでの腹腔鏡下腎盂形成術の報告をみると,開放手術と同等の手術成績が報告されている.しかし,これらの報告は腹腔鏡手術の症例数が比較的多い施設からの報告であり,腹腔鏡手術の更なる普及に伴い,腹腔鏡下腎盂形成術の良好な成績が維持されるかどうか,今後の推移を注意深く見守る必要がある.
  2013年度から,泌尿器腹腔鏡技術認定制度の審査対象術式に腹腔鏡下腎盂形成術が追加された.腹腔鏡下腎摘除術や腹腔鏡下副腎摘除術が皆無あるいはきわめて症例数が少ない特に小児病院に勤務する泌尿器科医にとっては,腹腔鏡技術認定の審査対象術式の拡大は朗報であろう.このような制度の拡充と共に,腹腔鏡下腎盂形成術の技術向上のために教育内容の更なる充実を図ることも日本泌尿器内視鏡学会の重要な責務である.
  以上のことを踏まえて,本特集が企画された.本特集では,腹腔鏡下腎盂形成術のためのトレーニング法,後腹膜アプローチ及び経腹膜アプローチによる腹腔鏡下腎盂形成術の手技のポイント,小児に対する腹腔鏡下腎盂形成術,そして小児の左側の腹腔鏡下腎盂形成術における経腸間膜的アプローチの有用性など,既に腹腔鏡下腎盂形成術の経験がある中堅医師,あるいはこれから腹腔鏡下腎盂形成術に取り組みたいと考えている若手医師のいずれにとっても重要なテーマが取り上げられている.本特集が腹腔鏡下腎盂形成術を解説するバイブル的な存在として長く読み継がれることを期待したい.

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© 2013 日本泌尿器内視鏡学会
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