抄録
【背景】わが国における腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP)は1999年に開始され2013年までの15年間に約13000例が施行された.当科では2002年からLRPを開始し10年以上が経過した.本稿では当科で施行したLRPの術後QOL,制癌効果を中心に長期成績について解説する.
【対象と方法】2002年4月から2015年3月までに当科でLRPを施行し,解析可能であった586例を対象とした.術後QOLの評価は自己記入型QOL問診票Expanded Prostate Cancer Index Composite(EPIC)を用い,EPICにてパッド1日0-1枚と解答した症例を尿禁制ありと定義した.
【結果】年齢は中央値65歳(45-75歳),術前PSA値は中央値7.14 ng/ml(1.13-50 ng/m).NCCNリスク分類では低リスク177例,中リスク278例,高リスク131例であった.術前ホルモン療法は90例で施行されており,神経温存は283例の症例で行われた.手術時間は中央値250分(125-640分),尿込み出血量は中央値262ml(9-2044ml)であった.病理学的結果はpT2が473例,pT3が99例,pT4が1例,断端陽性は18.6%であった.尿禁制率は12ヶ月で79%となりその後は横ばいとなったが,EPIC尿失禁スコアは12ヶ月以降も緩やかな改善傾向を認めた.EPIC性機能スコアは術後12ヶ月で改善傾向が明らかとなり,その後の改善はごく緩やであった.5年PSA非再発率は89.3%であった.
【結語】術後尿失禁および性機能は12ヶ月でほぼ回復し,その後の回復は緩やかであった.この傾向は神経温存症例で顕著であった.制癌効果は断端陽性率,PSA非再発率とも諸家の報告と同等であり,LRP単独でも良好な長期成績であった.