Japanese Journal of Endourology
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特集3:泌尿器内視鏡手術のリスクマネージメント
泌尿器腹腔鏡手術における危機管理の伝承
羽渕 友則
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2017 年 30 巻 1 号 p. 67-71

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抄録

 腹腔鏡手術における“医療安全”や“危機管理”を確実にするにはどうしたらよいか?“安全”は存在することはなく,“リスクを如何にゼロに近づけるか,というマネージメントとプロセス”と言われています.すなわち,リスクはゼロにはなりません.どんなに“安全な船”を造っても,沈没する確率はゼロにはならないのと同様です.腹腔鏡手術においても“安全な手術”とは患者,家族,社会にとって許容できるレベルまで“不幸な事象”のリスクを下げられた手術だと思います.そのためには,いろんな方面からの“防御壁”が必要でしょう.例えば,術前・術中・術後に分けて対策を立てることも必要ですし,さらには“危険回避のストラテジー”という観点からリスクを最小化することも重要です.また,医療安全における“Tragedy”には様々なパターンがあることも十分知るべきでしょう.“システム型のTragedy”は様々な医療安全管理によって程度も頻度も随分改善されてきましたが,“不幸な境遇型”や“誤認・ご判断型のTragedy”は未だに外科医を悩ます難題と言えるかと思います.腹腔鏡手術を患者,家族,社会にとって,許容できるレベルまで安全に行い,その安全性に継続性を持たせるためには,危機管理の伝承が非常に重要であると考えます.

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© 2017 日本泌尿器内視鏡学会
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