Japanese Journal of Endourology
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特集2:小児腹腔内精巣─どう扱うか?
腹腔鏡下精巣固定術
─精巣血管の温存をめざして─
水野 健太郎西尾 英紀守時 良演加藤 大貴安井 孝周林 祐太郎
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2018 年 31 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

 停留精巣の20〜35%は非触知であり, 今日では診断・治療を目的として広く腹腔鏡手術が行われるようになった. 私たちは非触知精巣に対して原則として全例で臍部からの腹腔鏡視を行い, 消失精巣に対しても腹腔鏡のみで完遂するアルゴリズムで対応している. 腹腔内精巣に対しては, 精巣血管を遮断するFowler-Stephens法ではなく, できるだけ精巣血流を温存して精巣固定術を行う工夫を行ってきた. この理由として, 精巣血流を遮断するFowler-Stephens法では, 1.6~5.5%の症例に精巣萎縮が見られることや, 精巣発育についての長期成績が明らかでなく, 症例数が限られているため十分なRCTが行われていないことが挙げられる. また, 私たちが確立した停留精巣動物モデルを用いた基礎研究で, 精巣血流の遮断によって精子形成が高度に障害されたことから, 血流温存が精巣の機能維持に重要と考えられたことも, その理由の一つである.

 腹腔内精巣の血流を温存して精巣を下降させるために私たちは, (1) 精巣血管の可及的頭側への剥離, (2) 精巣血管の腹膜からの剥離, (3) trans scrotal trocarの利用, (4) 良好な視野確保, といった点に注意して手術を行っている. 本稿では, 腹腔内精巣に対する腹腔鏡下精巣固定術において, 私たちが行っている実際の手術方法を述べるとともに治療成績や問題点についても概説する.

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© 2018 日本泌尿器内視鏡学会
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