Japanese Journal of Endourology
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特集1:前立腺全摘 手術教育 若手医師にいかに伝えるか
前立腺全摘において克服すべきtrifectaに関わる手術解剖と術中に最低限行うべき手術手技
─尿失禁─
羽賀 宣博丹治 亮小名木 彰史滝浪 瑠璃子星 誠二秦 淳也佐藤 雄一片岡 正雄小川 総一郎小島 祥敬
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2018 年 31 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

 前立腺全摘術後の早期尿禁制を獲得するためには, 尿禁制保持のための解剖学的構造物の温存, 再建, 補強が重要である. その中で, 「若手医師に最低限伝えるべき」という観点からは, 外尿道括約筋の機能を温存するための手術解剖と手術操作が重要であると考えられる. 外尿道括約筋機能を温存するためには, 第1に膜様部尿道長を可及的に温存することである. そのためには, dorsal vascular complexと前立腺尖部の適切な処理行うこと, 膀胱尿道吻合の際に, 外尿道括約筋腹側のバイトの取り方に十分注意することが肝要である. 第2に尿道括約筋を支配する神経を温存することである. 外尿道括約筋機能に重要な陰部神経の内臓枝は, 肛門挙筋を露出する操作で損傷を受けやすいとされる. さらに, 神経血管束に沿って, 自律神経線維が尿道にも分枝していることが明らかとなり, 神経温存手技によってこの自律神経が温存され, 早期尿禁制獲得への関与が示唆されている. 第3に, 後壁再建である. 我々が開発した腹膜を用いた後壁再建法により, 尿道断端の骨盤深部への落ち込みを防止することで, 緊張なく膀胱尿道吻合が行え, かつ術後の膜様部尿道長が維持されることで, 早期尿禁制が獲得された. 以上のポイントを踏まえ, 再現性のある手術を指導医が行うことが若手医師への教育につながると思われる.

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© 2018 日本泌尿器内視鏡学会
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