日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
原著
肺経由動脈熱希釈法(PiCCO)によるALI/ARDSの原因病態の検討
—基礎疾患による肺血管外水分量と血管透過性の違いについて—
森澤 健一郎平 泰彦高橋 浩雄大内 崇裕藤縄 宜也大橋 仁志鹿志村 猛野田 聖一桝井 良裕明石 勝也
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 10 巻 6 号 p. 580-584

詳細
抄録

急性肺損傷/急性呼吸窮迫症候群(ALI/ARDS)は肺血管透過性亢進に基づく肺水腫が本態である。しかし,診断基準に該当する病態は多く客観的な評価が困難となっている。肺経由動脈熱希釈法を用いたPiCCOは,肺血管外水分量(EVLW),肺血管透過性指数(PI)を測定し,肺水腫を定量的に評価できる。われわれはALI/ARDSを基礎疾患別に誤嚥性肺炎,市中肺炎,肺外感染症の3群に分類し,PiCCOによる評価を行った。EVLWIは3群間に有意差を認め,その中央値,25%値,75%値は誤嚥性肺炎群(20ml/kg,16ml/kg,24ml/kg)が最も高く,次いで肺外感染症群(15ml/kg,10ml/kg,19ml/kg),市中肺炎群(9ml/kg,8ml/kg,10ml/kg)の順に高値を示した。PIの中央値,25%値,75%値は,肺外感染症群(0.49,0.4,0.56)と誤嚥性肺炎群(0.47,0.41,0.76)では有意差を認めなかったが,両者に比べて市中肺炎群(0.33,0.26,0.47)は有意に低値を示した。ALI/ARDSは基礎疾患により病態が異なると推察され,PiCCOはALI/ARDSの病態を評価する手段として有用である。

著者関連情報
© 2007 日本臨床救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top