日本臨床救急医学会雑誌
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原著
富山医療圏における救急救命士の気管挿管認定への取り組み
―救急隊を対象とした客観的臨床技能評価テスト(OSCE)の導入―
若杉 雅浩小倉 憲一奥寺 敬本道 洋昭
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2007 年 10 巻 6 号 p. 585-591

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抄録

目的:気管挿管認定救急救命士(以下,認定救命士)による気管挿管の実施開始を許可するにあたり,富山医療圏メディカルコントロール協議会では,認定救命士の所属する救急隊を対象とした客観的臨床技能評価テスト(OSCE)の合格を前提条件としている。今回,その現場活動への改善効果について報告する。方法:新規に育成された認定救命士の所属する救急隊を対象として,われわれが作成した評価法によりOSCEを実施した。OSCE実施後の現場活動改善効果の指標としては,導入前後の傷病者接触から初回心電図解析までの経過時間の変化,および気管挿管例と他の器具による気道確保実施例における現場滞在時間を比較することで評価した。結果:平成18年度末までに育成された39名の認定救命士とその所属する全19救急隊が,約1か月の事前訓練の後にOSCEを受験した。うち6チームが初回不合格となったが,2回目のOSCEまでにすべての救急隊が合格した。現場活動評価については平成16年から18年の間に実施された気管挿管症例は116例であり,その成功率は93.8%であった。傷病者接触から心電図解析までの時間は,OSCE導入前の3分から導入後は1分28秒と短縮された。現場滞在時間は気管挿管例と他の器具による気道確保例でそれぞれ11分12秒と12分24秒と有意差を認めなかった。結論:救急隊活動をOSCEにて評価することは,気管挿管の安全性の確保のみならず救急現場活動の質の向上に貢献する有効な方法である。

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© 2007 日本臨床救急医学会
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