2007 年 10 巻 6 号 p. 603-608
平成19年3月13日の高知空港胴体着陸事例では,空港災害時における緊急医療体制についてさまざまな問題があった。情報発信,連絡体制,現場での指揮命令系統,地域の防災計画との連携,受け入れ医療機関側の体制などが問題点としてあげられた。その原因として危機管理という認識が空港側には十分でなかったこと,空港での緊急医療計画ならびに地域の防災計画は医療面に関していまだ不十分であったこと,医療機関側も統一した対応ができず,災害に対する認識に差があったことなどが課題としてあげられた。今後は,空港,医療機関,消防,行政,警察など関連機関間で危機管理の認識を統一し,現況に見合った空港緊急計画の見直し,実質的な訓練の実施と訓練後はより改善していく姿勢,通常の救急医療体制のさらなる充実が必要である。今回の教訓を生かし,空港におけるよりよい緊急医療体制の構築とその充実が望まれる。