日本臨床救急医学会雑誌
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原著
救急車内での胸骨圧迫心臓マッサージの質に関する研究
安田 康晴加藤 義則
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2010 年 13 巻 6 号 p. 683-689

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抄録

救急車搬送中は質の高いCPRが行えていないことが報告されている。そこで,本研究は救急車内の胸骨圧迫の質低下の要因を明らかにすることを目的とした。研究1:救急救命士養成課程の大学生69名を対象に,床(床群)と救急車カットモデル(救急車群)で2分間の胸骨圧迫心臓マッサージを行い,胸骨圧迫の質と身長分布による胸骨圧迫深度を比較した。胸骨圧迫深度の平均は床群44.4 ± 3.5mm,救急車群37.9 ± 5.1mmと救急車群が有意に浅く,胸骨圧迫成功率(正確な胸骨圧迫回数/全胸骨圧迫回数)は床群89.3 ± 15.1%,救急車群65.3 ± 31.5%と救急車群が有意に低かった(p<0.05)。身長と圧迫深度には相関関係はなかった。研究2:救急隊員9名を対象に,床と救急車カットモデル内で,胸骨圧迫時の筋活動を測定した。床群に比べ救急車群が上肢伸筋群である上腕三頭筋の筋活動が有意に増大していた。救急車内での胸骨圧迫の質低下の要因は,床と異なる胸骨圧迫方法であることが示唆された。

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© 2010 日本臨床救急医学会
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