搬送病院を決定するまでに長時間かかる理由を明らかにするために,横浜市安全管理局の協力を得て,2008年2月の連続した7日間に出動した全事案を調査し,救急隊が病院選定に必要とした連絡回数を1回から5回以上の5段階に分けて,以下の6項目を検討した。1)傷病程度,2)事案発生の時間帯,3)事故種別,4)既往症,5)拒否理由と6)現場滞在時間。さらに,7)多数の連絡回数を必要とした症例の特徴を連絡回数6回以上の症例で検討した。結果:その他の傷病程度の1例を除いた対象2,678例のうち,軽症と中等症が88.6%(2,372例)を占めていた。1回の連絡で病院が選定できた割合は,軽症から重症は重篤と死亡より低率であった。事故種別では,急病62.7%(1,681例),一般負傷15.7%(421例),交通事故9.1%(243例)が大半を占めた。1回の連絡で病院選定ができた事故種別の割合では,急病(80.4%)は一般負傷(63.9%),交通事故(68.3%)に比べてともに高率であった(p<0.005)。既往症別に連絡回数1回での選定割合では,精神疾患(66.6%)は脳疾患 (76.1%)と両疾患ともになし(74.8%)に比べて低率であった(p<0.025,p<0.005)。拒否理由は回数にかかわらず満床,専門外,処置困難,医師不在の順に多かった。現場滞在時間は142分±58分から37.2分±143分へと,回数が増えるにつれて延長した。多数の連絡回数を要した事案の特徴を連絡6回以上の症例で検討すると,外傷が多く,必要とする診療科は整形外科,消化器内科,脳外科であった。結論:病院選定に時間がかかる事案は軽症,中等症,重症で,既往に精神疾患をもつ症例は受け入れが難しいことが明らかとなった。また,連絡回数が6回以上の検討から,6回以上の連絡を必要とする症例は,手間がかかるとか,トラブルを起こしそうな背景をもつことが多かった。救急搬送症例の診療に必要とされている医師は整形外科,脳外科と消化器内科であることが明らかになった。