2011 年 14 巻 4 号 p. 529-533
症例は34歳男性,約18年間の覚醒剤使用歴を有する。徐々に増悪する倦󠄀怠感と顔面・下腿の浮腫を主訴に来院し,心エコー検査にて心収縮力低下と巨大左室内血栓を認め緊急入院となった。降圧薬・利尿薬による心不全治療と,抗凝固療法を開始した。入院第4病日に血栓の縮小と可動性増大を認め緊急手術を勧めたが,手術の同意が得られず内科的治療を継続した。入院第5病日に左側腹部痛が出現し,入院第6病日に左室内血栓は消失しており,造影CTにて血栓の塞栓による牌梗塞を認めた。感染・疼痛管理を行い,入院第8病日には歩行・経口摂取可能となったが,入院第9病日に自己退院となってしまった。覚醒剤使用による拡張型心筋症様の心不全に,巨大左室内血栓が合併したと考えられる1例を経験した。若年者の覚醒剤使用例では,急性心不全を発症する可能性を考慮する必要があると考えられた。