2011 年 14 巻 5 号 p. 614-619
後縦靭帯骨化症の既往のある77歳男性。2mの高所より転落受傷し,当院に搬送された。浅呼吸,徐脈・低血圧,低体温の状態であった。CT上C3・T1椎体,C7棘突起の骨折,MRI上C2-5脊髄内に高信号域を認め,頸髄損傷と診断した。気管挿管,人工呼吸管理とし,大量輸液とドパミン持続投与を行った。人工呼吸器離脱は困難と考え,第7病日に気管切開術を施行した。徐脈・低血圧も改善なく,高度の徐脈発作に対して頻繁にアトロピンを使用するようになった。第21病日より頸髄損傷後の徐脈に対してテオフィリンの経腸管投与を開始した。血中濃度を10μg/ml前後で調節することで徐脈発作は消失し,第33病日にドパミンを中止,第50病日に転院した。キサンチン誘導体が脊髄損傷後の徐脈に有効との報告は散見される。脊髄損傷後の徐脈に対するテオフィリン投与は,恒久的ペースメーカーを回避できる有効な治療手段と考えられた。