日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
症例報告
たこつぼ型心筋症の合併が考えられた重症破傷風にマグネシウム製剤が有効であった1例
石井 道人藤谷 茂樹西尾 康英
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 15 巻 1 号 p. 48-52

詳細
抄録

たこつぼ型心筋症の合併が考えられた重症破傷風の治療にマグネシウム製剤を使用し,良好な転帰を得た症例を経験した。症例は79歳女性。右母趾受傷の2週間後に後頸部痛,顎関節痛で発症,開口障害が進行し,破傷風の診断で緊急入院となった。入院12時間後より全身痙攣が出現,人工呼吸器管理を開始するも,痙攣と呼吸・循環動態の管理に難渋した。第5病日よリマグネシウム製剤の使用を開始したところ,痙攣発作が減少し管理が容易となった。第30病日に人工呼吸器離脱,第47病日に後遺症なく退院した。経過中たこつぼ型心筋症を疑う心電図変化と壁運動の低下を認めたが,破傷風の病態改善とともに軽快した。マグネシウム製剤の使用は,呼吸・循環管理を容易とするだけでなく,早期のリハビリも可能とし,早期退院に寄与する可能性がある。破傷風ではたこつぼ型心筋症を合併する可能性があり,心電図変化がみられた際は,冠動脈造影検査を含めた画像評価を考慮する必要がある。

著者関連情報
© 2012 日本臨床救急医学会
前の記事
feedback
Top