日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
糖尿病性ケトアシドーシスの発症を契機に膵癌と診断された1例
五十嵐 一紀山口 陽子小林 由佳黒岩 貴之小山 要田中 博之
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2014 年 17 巻 3 号 p. 473-477

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抄録
25年前に糖尿病と診断された63歳の女性。呼吸困難が増強し,当院へ搬送された。搬入時,血液濃縮,BUN・creatinine値の上昇,高血糖,尿糖・尿中ケトン体強陽性,anion gap増大を伴う代謝性アシドーシスなどから糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と診断した。同時に腹部CTで膵管拡張を認めた。腫瘍マーカーは高値,腹部MRI・MRCPで膵管途絶・膵体尾部の膵管拡張を,内視鏡超音波検査で腫瘍影を認めたため,膵頭十二指腸切除術を実施した。膵腫瘍の病理所見は浸潤型膵管癌であった。本症例は,約半年間の治療中断および肺炎の併発が誘因となってDKAを発症したと推定された。ただし,インスリン分泌が枯渇していた可能性があり,1型糖尿病の発症を否定できないが,併発していた膵癌が膵β細胞のインスリン分泌能を低下させ,DKAの発症に影響した可能性は低いと考えられた。しかし,本症例のようにDKAをきたした症例には,より積極的に膵癌の検索を行うべきではないかと考える。
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© 2014 日本臨床救急医学会
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