2015 年 18 巻 1 号 p. 60-62
アナフィラキシー患者の一部は,アドレナリン自己注射製剤(エピペン®)(以下,エピペン)を所持している。しかし,エピペンの使用状況は明らかでない。今回,救急隊員と母親の連携でエピペンを使用した小児症例を経験した。症例:13歳男性。外出先で菓子摂食後,呼吸困難と紅斑が出現し,帰宅後に母親が救急要請した。救急隊到着前に母親がエピペンを注射しようとしたが,患児は注射に対する恐怖があり,母親では実施できなかった。救急隊到着時,患児は意識清明で自力歩行可能であったが,呼吸困難を訴え,喘鳴と全身紅斑を認めた。救急車内収容後,救急隊員が母親とともに患児に説明し,同意を得て母親がエピペンを注射し,救急搬送した。病院到着前に症状は軽快した。本症例は,患児がエピペン注射を拒んだものの,救急隊員と母親との連携により注射を実施でき,奏功した例である。