1999 年 2 巻 2 号 p. 232-236
脳神経外科手術において慢性腎不全患者の転帰は不良であったが,急性期の集中治療に持続血液濾過透析(CHDF)が使用されるようになり,新たな局面を迎えようとしている。今回われわれは,最近2年間に県立広島病院救命救急センターでCHDFを用いて治療を行った重症脳神経疾患手術症例5例について,周術期の問題点について臨床的に検討した。平均年齢62歳で全例脳神経疾患発症前より血液透析を受けていた。疾患の内訳は頭部外傷2例,脳出血2例,くも膜下出血1例であった。CHDFの使用期間は2日から11日であった。CHDFの利点は厳密な循環管理が可能であることで,脳卒中や頭部外傷に伴う頭蓋内圧充進症例でも術後の管理に有用であり,CHDFはICUにおける慢性腎不全患者の脳神経外科周術期管理に適しているものと考えられた。