日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
埼玉県東部地域における外傷傷病者搬送に関する書面式事後検証体制の変更についての報告
山田 浩二郎増本 幸志天野 尽杉本 一郎杉木 大輔松島 久雄
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2017 年 20 巻 6 号 p. 738-747

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抄録

背景と目的:埼玉県東部地域では2008年より救急搬送された重症・リスク受傷機転例はメディカルコントロール(以下,MC)担当医が地域で独自に作成した外傷活動記録票(以下,外傷検証票)を用い面談式および書面式事後検証を行うと計画としたが,面談式検証のみ実施されていた。そこで2014年4月より書面式該当例は消防組織内で一次検証し,医師および救急救命士により構成されるワーキンググループ(以下,WG)で二次検証する方式へと変更した。今回制度変更による書面式検証の実施率,検証結果の共有および検証の妥当性などについて検討したので報告する。対象と方法:調査対象;本MC 協議会管内における制度変更前2012 年1 月より1 年間(12消防組織)および変更後2014年4月より1年間(統合された8消防組織)とした。調査項目;1.外傷症例の一次検証(面談式・書面式)実施の有無。2.重症以上の外傷症例数及び一次検証数。3.事後検証結果の消防組織内における共有の有無。4.制度変更後における一次検証と二次検証の結果を比較し妥当性を評価した。結果と考案:1.一次検証は変更前,半分の6消防組織で実施され,その方法は面談式0,書面式6であった。変更後は全8消防組織,その方法は面談式2,書面式7(重複あり)であった。2.重症以上の外傷症例数及び一次検証数はそれぞれ変更前908件,207件(23%),変更後は945件,468件(50%)であった。3.変更前検証結果共有は6消防本部であったが,変更後全消防本部で閲覧可能としていた。4.回収した一次検証書類中約10%にWGによる検証評価の修正が必要であり,各消防組織を通じフィードバックを行った。外傷症例の書面式事後検証に外傷検証票を用いた一次検証を導入しその質を二次検証で確認するMC担当医の負担を著しく増大させない制度変更は,検証の質を維持しつつ検証実施対象事例を増加させ得る一方策である。

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