2019 年 22 巻 4 号 p. 608-612
東京都の脳卒中救急搬送体制と救急医療の東京ルール体制開始(2009年)前後で,救急隊の医療機関選定が効率化されたか検証した。東京消防庁板橋消防署小茂根救急隊の救急活動事案を,2008年を前半群,2011年を後半群とした。2群間で出場から現場到着までの時間,現場活動時間,照会件数,医療機関選定時間,現場から医療機関到着までの時間,現場から医療機関までの距離で検討した。出場から現場到着までの時間,現場活動時間は前半群より後半群が有意に延伸していた。照会件数は前半群に比して後半群が有意に減少し,医療機関選定時間は前半群に比し後半群が有意に短縮していた。医療機関選定効率では病院前の救急隊活動時間のみでなく照会件数,医療機関選定時間で評価する必要がある可能性が示唆された。救急隊の病院前救護体制をネットワークとしてとらえ,スモールワールドネットワーク理論などの新たな方法で検討することが重要である。