2020 年 23 巻 1 号 p. 32-35
大腿骨近位部骨折の受傷後1年での死亡率は十数%といわれており,その死亡率は術後の歩行能力が関与するとの報告が多い。また退院時の歩行能力がその生命予後を左右するとの報告もあり,歩行能力の再獲得が非常に重要である。2017年1月〜2018年8月までに当院で手術を施行した52例について,退院時に歩行可能であった26例と歩行不能であった26例に分け検討した。年齢,認知症の有無,入院前の歩行能力に加え,初回車椅子乗車までの日数に有意差があり,ROC曲線を描きカットオフ値を求めると術後3日でもっとも予測能が高かった。つまり入院前に自立歩行が可能であり認知症のない患者は,術後3日以内に初回車椅子乗車をすることで退院時歩行能力を再獲得できたという結果である。本検討での結果は十分条件とは断言できないが,術後3日以内の早期離床により歩行能力の再獲得さらには長期的な生命予後につながる可能性が示唆された。