2021 年 24 巻 5 号 p. 613-620
目的:わが国の救急隊員が傷病者その家族等の関係者より受けている身体的・言語的・性的暴力の実態および,救急救命士の資格の有無,消防隊との兼任や職位との関連についても明らかにする。研究方法:調査対象者は救急隊員512名で有効回答数は322名であった。 調査方法は横断式質問紙法で性別,年齢,救急隊員としての職務背景,身体的・言語的・性的暴力の実態について調査を行った。結果:回収数は322名(有効回答率65%)であった。わが国の救急隊員の34%が身体的暴力を,62%が言語的暴力,6%が性的暴力を経験しており,暴力を経験した救急隊員の約半数が1年以内に暴力を受け,かつ複数回にわたって暴力を経験していた。考察:海外の救急救命士と比べて同等,もしくはそれ以上の暴力を経験していた。 その背景には混乱した現場の状況や,職位や資格の有無といった現場活動における役割などが影響を与えていることが示唆された。