日本臨床救急医学会雑誌
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原著
気管チューブのカフに一定量の空気を注入しても推奨される圧は得られない
―ブタ気管を使った検討―
瀧野 昌也金井 健小林 拓幹宮尾 政成
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2021 年 24 巻 5 号 p. 627-632

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抄録

目的:一定量の空気注入により得られる気管チューブのカフ圧について,ブタの気管を用いて検討する。方法:新鮮なブタの気管に気管チューブ(内径7mm,7.5mm,8mm)を留置し,5mLまたは10mLの空気をカフに注入してからカフ圧計でカフ圧を7回ずつ測定した。また,カフに0.5mLずつ空気を注入しながらカフ圧を測定して圧量曲線を求めた。結果:カフ圧を平均値(95%信頼区間),単位cmH2Oで表す。成人男性サイズの気管(内径17×17mm)と空気5mLの組み合わせでは,内径7mmのチューブで11.5(11-12),7.5mmで9.4(8.6-10.3),8mmで10.8(10.1-11.5)。空気量10mLではそれぞれ53.8(51.5-56.1),59.3(56.9-61.7), 60.5(57.1-63.9)。成人女性サイズの気管(内径14×14mm)に空気量5mLではそれぞれ39.1(36.4-41.8),32.9(31.3-34.5),40.2(37.4-43.1),空気量10mLではいずれも120を超えた。圧量曲線では,推奨されるカフ圧の範囲(20 〜30)に相当する注入空気量の範囲は約1mLに過ぎなかった。結論:一定量の空気注入により推奨されるカフ圧を得ることは困難であり,この方法を含むプロトコールは見直されるべきである。緊急の気管挿管後には,可及的早期にカフ圧の調整を行うべきである。

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