2022 年 25 巻 1 号 p. 78-83
救急救命士の多くは消防機関に所属しているが,最近では病院で雇用され,救急外来のタスクシェアを試みている先駆的な施設が多く出現してきた。当院では2011年より看護部で救急救命士を採用し,救急外来で主に看護補助業務を担っていた。救急救命士の有効活用を目的に,2018年に救急業務支援室を新設して救急救命士の所属を変更し,その業務内容を刷新した。現在救急救命士は,主業務を救急搬送とし,院内トリアージ,初療の補助,救急要請電話対応,画像検査時の搬送,院内急変時の応援,救急蘇生勉強会の開催,災害出動など多岐にわたる救急に関連する業務を担っている。当院は,現在病院救急車を積極的に運用し,転院搬送だけでなく,クリニックを含めた紹介元医療機関に赴いた患者収容を開始し,さらに在宅診療中の患者の居宅からの収容も行い,救急患者の搬送件数は飛躍的に増加した。病院前救護の拡充は,消防機関における救急搬送の負担軽減や病病・病診連携に貢献している。また病院前救護から一貫した救急初期診療へのかかわりは,病院救急救命士の医療従事者としてのモチベーションの向上にもつながっている。