2022 年 25 巻 1 号 p. 89-93
特発性大網梗塞は,急性腹症として救急外来を受診し得る疾患であるが,急性期管理の指針が確立されていない。大網切除術を行う症例もあるが,CTで術前診断がされるようになり入院保存的治療が選択される症例も散見される。若年者に好発し,予後良好な疾患であるが,わが国では外来治療を行った報告はない。症例は44歳,男性。来院2日前から下剤を使用していた。来院4時間前に突然発症の腹痛があり,来院時には臍部に限局する圧痛と右鼠径部腫瘤があった。CTで疼痛部位に一致する大網の限局性脂肪織濃度上昇と,右鼠径ヘルニアがあった。鼠径ヘルニアは嵌頓しておらず,大網捻転を示唆する所見もなかったため,特発性分節性大網梗塞と診断した。下剤の内服中止と鎮痛薬の内服により,外来で保存的治療を行い治癒した。自制範囲内の疼痛で,症状増悪時の緊急受診指示に従える症例では,24〜48時間以内で症状経過を確認する外来保存的治療も選択肢となる。