2022 年 25 巻 3 号 p. 602-606
症例は88歳女性で,高血圧症に対し16年前よりアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を内服中であった。イチジクの経口摂取後から舌に違和感を自覚しはじめ,急速に舌腫大をきたしたため近医を経て当院救急外来を受診した。抗ヒスタミン薬,副腎皮質ステロイド薬の静脈内投与後も改善なく,気道閉塞のリスクを考慮し気管挿管を行い人工呼吸器管理とした。入院後,ARBを中止としたところ舌腫大は経時的に改善し,第5病日に抜管,第13病日に自宅退院となった。自験例は,近年報告が増加しているARBによる薬剤性血管性浮腫と考えられたが,長期内服中に発症した誘発因子として,イチジクによる口腔アレルギー症候群の関与が示唆された。