2022 年 25 巻 5 号 p. 837-843
ST上昇型心筋梗塞患者の再灌流までの時間を短縮し予後を改善するため,病院前12誘導心電図(PHECG)伝送が推奨されている。また,PHECG伝送によって病院到着前の時点での緊急度の把握などが可能になると考えられ,PHECG伝送システムの構築は救急医療体制の質を向上させるうえで重要なテーマである。大阪府には既存の救急システムである,大阪府救急搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)があり,府内の全消防機関および全救急医療機関で使用され,全救急搬送患者の病院前後の情報が患者単位で一括登録されている。ORIONを用いた伝送システムは,PHECGの結果をORIONサーバーに送ることで,リアルタイムに救急現場と医療機関をつなぐことができるとともに,伝送を実施し経皮的冠動脈形成術に至った患者のdoor-to-balloon timeなどの指標や予後の分析が可能となる。今回,ORIONを活用したPHECG伝送システムを構築したので,システムの概要と今後の展望について述べる。