2023 年 26 巻 1 号 p. 31-39
背景:介護施設から多くの高齢者が救急搬送され,救急医療を逼迫する一因となっている。望まれない搬送の場合もあり,さまざまな要因がある。目的:介護施設における救急搬送の問題点を介護施設の視点から検討する。方法:介護施設へ,入所者の意思確認,救急要請の判断基準や看取りなどについてアンケートを行った。結果:93.9%が意思確認を行い,看取りまで可能と回答した。一方で39.4%の施設で希望しない救急搬送を行ったことがあり,医師の不在,回復可能な急変,家族の意向の変節などの理由があげられた。相談窓口があれば活用したいと69.7%の施設が考えており,医師への連絡体制が限られている施設ほど高い傾向があった。結論:看取りまで可能な介護施設において意向に反する救急搬送が行われる背景には,医療者の不在や意思確認のプロセスの曖昧さが影響していると推察される。その対処として相談窓口設置や早期からACP(advance care planning)を実践する体制整備が必要であると考えられた。