日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
搬入時にシートベルト損傷による軽微な外傷性胆囊内出血と思われたが,のちに急性胆囊炎を生じた1例
森山 直紀山田 勇小谷 穣治
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2023 年 26 巻 4 号 p. 519-524

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抄録

腹部外傷における胆囊損傷合併頻度は2%程度とまれである。搬入時は軽微であった外傷性胆囊内出血により,のちに手術を要した症例を考察する。症例は70歳代,女性。右ハンドル車の助手席にシートベルトを装着して乗車中に事故に遭い受傷した。当院搬送時の造影CTで右下殿動脈損傷と腹腔内出血,胆囊内にごくわずかな出血がみられた。右下殿動脈損傷に対して動脈塞栓術を行い入院したが,5日目に上腹部痛が悪化し発熱した。造影CTで急性壊死性胆囊炎と診断し腹腔鏡下胆囊摘出術を行った。胆囊穿孔はなく,病理組織検査では出血を伴うびまん性全層性壊死と血管内血栓形成の所見であり,血流障害が疑われた。入院13日目に退院した。本症例はシートベルトによる胆囊内出血と,それに続発する胆囊炎であったと思われた。当初軽微な外傷性胆囊内出血であっても,後に手術を要することがあり,詳細な読影による予測と臨床所見の出現に注意が必要である。

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