日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
社会的問題を抱えた傷病者に対する救急・福祉連携について
榊原 丈菅田 淳悟大屋 悠真
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2023 年 26 巻 6 号 p. 747-751

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抄録

当市では近年,社会生活基盤や家族背景の脆弱性などを背景とする,社会的・心理的な課題(以下「ソーシャルハイリスク」という)を抱える傷病者の頻回の救急要請や救急搬送困難事例が顕在化している。複雑多様化する救急現場の負担を改善するため,市内の医療機関と消防本部が連携することで頻回の救急要請および搬送困難事例の減少につなげる方法を検討した。医療機関との検討を経て,救急隊が傷病者を医療機関に搬送した際,医師に傷病者情報を引き継ぐタイミングで医療機関に常駐する専門職である医療ソーシャルワーカー(以下「MSW」という)に情報をつなぐことで,早期かつ円滑な支援介入を目指した連携体制を令和2年3月に構築した。この医療機関およびMSWとの情報共有に関する仕組みを「EM-PASS連携」と称して構築し,医療機関との連携により,同一傷病者による頻回の救急要請件数の減少につなげる取り組みを進めている。連携を進めるなかで,MSWが常駐しない医療機関への救急搬送や不搬送事案においては連携ができないことから,「EM-PASS連携」を補完する仕組みとして,「支援会議を活用した福祉部局との連携」体制を令和4年4月に構築した。ソーシャルハイリスクを抱える傷病者に対し,「EM-PASS連携」および「支援会議を活用した福祉部局との連携」を構築したことで,「EM-PASS連携」511件,「支援会議を活用した福祉部局との連携」9件においてソーシャルハイリスクを要因とした傷病発生や悪化などに基づく救急要請を回避する効果を認めた。

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