2026 年 29 巻 2 号 p. 97-102
目的:病院前における傷病者およびその家族などによる救急隊員に対する暴力が与える精神的影響を明らかにする。研究方法:救急隊員322名を分析対象者とした。質問紙法による横断調査を行い,基本属性,救急隊員として傷病者およびその家族などの関係者による暴力を受けた経験を尋ね,IES-R(心的外傷体験),K-6(抑うつの程度),UWES-9(ワークエンゲイジメント)と暴力を受けた経験の関連を分析した。結果:12カ月以内に身体的暴力を受けることによって抑うつの程度が有意に高まり(p=0.001),12カ月以内に言語的暴力を受けた分析対象者は心的外傷体験の程度(p=0.008),抑うつの程度(p=0.038)が有意に高まることが明らかになった。考察:言語的暴力は身体的暴力と比べて過小に評価される傾向があるが,本研究の結果では,抑うつの程度が高まるなど精神的な影響が確認された。このことから,言語的暴力であっても精神的な支援が行われるよう取り組みについて検討を進める必要がある。