2026 年 29 巻 2 号 p. 89-96
目的:本邦では,救急出動件数の増加が社会的問題となっている。救急出動件数の増加は現場到着時間の遅延の一因となることから,消防救急が対応している転院搬送件数を削減することは喫緊の課題である。本研究は,救急搬送人員データを用いて名古屋市の消防救急による転院搬送の実態(重症度,時間帯,曜日)を明らかにすることを目的とした。方法:2017~2019年に名古屋市で発生した転院搬送23,637件を対象とした。対象を重症度,時間帯,曜日に分け,搬送件数と搬送割合を算出し,記述疫学的に分析した。結果:転院搬送の22,709件(96.0%)が中等症以下であり,搬送は平日の昼前(9:00~11:59),昼過ぎ(12:00~14:59),夕方(15:00~17:59)に16,865件(78.2%)が集中し,曜日別では月曜日と土曜日の搬送件数が多かった。結論:名古屋市の消防救急による転院搬送は,大半が中等症以下の症例で,平日の日中に集中していた。これらを民間救急へタスク・シフト/シェアすることで,消防救急の負担は軽減し得ると示唆される。