2001 年 4 巻 3 号 p. 286-291
目的:重症クモ膜下出血は脳単独疾患でありながら,全身に過大な生体侵襲が及ぶことが明らかになってきている。そこでわれわれは,重症クモ膜下出血患者の酸素代謝動態を検討した。方法:対象は24時間以内にclippingを施行したH & H grade ⅣまたはVの重症クモ膜下出血患者10例で,年齢は55±11.7歳,男性4例,女性6例であった。Swan-Ganzカテーテルを挿入し,心係数,全身血管抵抗係数,肺血管抵抗係数をモニターし,循環動態を管理した。全身酸素代謝の指標は酸素運搬量係数(DO2I)と酸素消費量係数(VO2I)を,組織酸素代謝の指標はPCO2 gapを用いて,一週間測定した。結果:DO2Iは正常範囲にコントロールされ,VO2Iは正常の下限を推移した。一方,PCO2 gapは8mmHg以上を推移し,胃粘膜血流障害が持続した。結論:重症クモ膜下出血では,組織レベルの酸素代謝障害が持続していることが明らかとなった。