日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
心筋障害を伴い診断に難渋した褐色細胞腫の一例
柳井 真知小林 宏正池田 香織石原 隆有吉 孝一佐藤 慎一
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2006 年 9 巻 6 号 p. 454-460

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抄録

68歳女性。糖尿病,高脂血症で近医加療中。前夜からの胸痛が持続したたため,某医を経由し当院救急外来受診。血圧172/102mmHg,脈拍94bpm,心電図で広範なST低下を認め,トロポニンT陽性,心エコーで心尖部を除き低収縮。収縮期血圧が40~200mmHgと変動を繰り返した。緊急冠動脈造影では有意な狭窄はなく,心機能は約7日で正常化した。CTで左副腎に3cm径の内部不均一な腫瘤を認め,褐色細胞腫の腫瘍内出血によるカテコラミン心筋障害・心原性ショックと考えた。しかし血中・尿中カテコラミンは軽度上昇のみで,第2病日の123I-MIBGシンチグラフィで取り込みなし。そのためメトクロプラミド負荷試験を施行。血中アドレナリンと血圧は有意に上昇,さらに第37病日の123I-MIBGシンチグラフィで左副腎への取り込みを認めたため左副腎褐色細胞腫と診断。第51病日,腹腔鏡下左副腎摘出術施行。一過性の心筋障害の原因として褐色細胞腫も念頭におく必要がある。

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© 2006 日本臨床救急医学会
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