抄録
本研究では,「複数の学習を架橋すること」を意味するラーニング・ブリッジング(LB)という概念に着目し,教員養成課程の学生の授業に対する課題価値の認知及び認知的方略の使用とLB の関連について検討した.パス解析による分析の結果,①教職志望度の違いによる各変数間の関連の違いは見られないこと,②認知的方略のうち,精緻化・体制化方略の使用がLB に対して影響を与えること,③課題価値の質的側面の違いによってLB に対する影響の仕方が異なることが明らかになった.具体的には,利用価値の認知が精緻化・体制化方略の使用を媒介してLB に影響するのに対して,興味価値の認知は認知的方略の使用を媒介せずに直接LBに影響していた.学生が複数の学習を架橋するためには,認知的方略を用いて意味理解を伴った学習を行うことだけでなく,授業に対して価値を見出すこともまた重要であることが示唆された.