2023 年 36 巻 1 号 p. 118-123
腹腔鏡下腎摘除術において, Gerota fascia (以下 : Gf) は経腹的アプローチでは膜構造として容易に認識できるが, 後腹膜アプローチではその見え方が経腹的アプローチとは大きく異なり, その存在自体を認識できない症例が少なくない. 今回, 我々は死亡献体より腎臓と腎臓周囲臓器を一塊に摘出し, Gfに剥離操作を加えない状態で検体作成を行い, 線維の走行, 密度などについて組織学的検討を行った. その結果, Gfは筋上膜のような強固な膜とは構造が異なり, 密度・配列など多様なコラーゲン線維のまばらな結合組織で構成されていることが分かった. すなわち, Gfが膜状構造物に観察されるのは, 結合組織が剥離操作にて変化した結果の可能性があり, アプローチする方向の違いによりその形態が異なって見えることを念頭におく必要があるものと考えられる.