2025 年 38 巻 1 号 p. 86-93
上部尿路上皮癌に対するリンパ節郭清は, 各ガイドラインにおいて推奨グレードは弱いものの, 進行癌においては行う事が推奨されている. 推奨グレードが弱い理由はランダム化試験がないためであるが, リンパ節郭清手技の標準化が難しいこと, 倫理的な問題からもランダム化試験は難しい. また, これまでの後方視的試験結果も治療的意義においては一定の結果になっていないこともその理由の1つである. しかしこれらの研究を詳細に見ていくと, 郭清範囲を一定にして行っている研究では治療的意義があるとする報告が多く, 逆に多施設研究で多く見られる郭清範囲が一定になっていない研究ではリンパ節数も少なく, 治療的意義がないとするものが多い. したがって郭清においては, 郭清範囲を決めて行う必要がある. テンプレートの範囲も, われわれの報告, 米国の報告ともにほぼ同様であることから, コンセンサスが得られているものと考えている.
2022年より本邦でもロボット支援腎尿管全摘術が保険収載された. ロボット手術の導入によりリンパ節郭清が行なわれる症例は多くなる傾向にあると報告されている. 郭清範囲としては右腎盂, 上中部尿管癌に対する大動静脈間リンパ節の摘除を含むリンパ節郭清の手技の標準化が課題となってくると思われる. ただこれまでの報告では, ロボット手術による切除リンパ節数は開腹手術とほぼ同等であることも報告されている. 腹腔鏡下腎尿管全摘術では, pT3以上の進行癌において開腹手術よりも癌制御が劣ることも報告されている. リンパ節郭清を確実に行う事でロボット腎尿管全摘ではpT3以上の症例でも開腹手術と同等の成績を示す事が期待される.