抄録
流動特性と粘弾性の概念を中心として,レオロジーの食品工学の役割について考察した.最初にレオロジーの基礎について述べた.第一に液体の粘度(流動粘度)と様々な流動特性について,第二に粘弾性の概念,第三に動的粘弾性測定法と,そのデータに基づくハイドロコロイドの分類法ついて解説した.ゾル-ゲル転移の解析に用いるWinterとChambonの理論についても概説した.また,流動粘度と動的粘弾性測定から得られる複素粘性率とを関係づけるCox-Merzの経験則について説明した.次いで,食品工学でみられるレオロジーの概念の活用例を紹介した.第一に非ニュートン流体の流動特性,とくに降伏応力の概念の適用例について述べた.第二に,嚥下障害者用介護食の物性設計の基礎として,物性とヒト咽頭部における食物の流速との関係について,筆者らの研究に基づいて概説した.