抄録
食品の凍結乾燥プロセスにおける乾燥特性を計測し,材料乾燥層の移動物性値を推算する計測システムを開発した.このために固形・水溶液・細胞質材料にそれぞれ適用可能な数理モデルを提唱した.熱伝導率は乾燥層固相マトリクス構造に,透過係数は細孔構造に依存すること,さらに乾燥層構造は予備凍結によって形成される氷結晶性状に影響されるため,液状材料の固形分濃度と凍結条件は,乾燥サイクル最適化の主要な制御因子となることを明らかにした.また,「マイクロスライサ画像処理システム」を開発し,予備凍結条件-材料内氷結晶3次元構造-氷結晶性状の関連性を総合的に計測することが可能となった.これらの研究成果に基づき,材料表面温度制御方式と材料内残留凍結部への伝熱促進法による乾燥時間短縮法を提唱した.これら実験室レベルの基礎的知見や要素技術をシステム化し,即席スープ類生産プラントの設計・操作にスケールアップして商業生産を実現した.