日本食品工学会誌
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マイクロチャネル乳化と静電積層法による単分散食品用エマルションの高安定化
小林 功市川 創作
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2015 年 16 巻 2 号 p. 89-96

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抄録

本稿では,マイクロチャネル(MC)乳化の食品分野への応用に向けて重要であると考えられる点を中心に概説する.筆者らは,代表的なMC乳化装置,MC乳化による液滴作製の基本特性,および単分散食品用エマルション,微粒子,微小カプセルの作製について紹介する.平板溝型MC乳化基板の主な特長は,並列MCを介した液滴作製の直接観察および作製可能な液滴サイズが広範囲であることである.貫通型MC乳化基板は,単分散エマルション液滴の生産性が平板溝型MC乳化基板と比べて高い点が有利である.MC乳化の独特な液滴作製機構は,ミクロンスケールにおいて支配的になる界面張力を活用しているため,熱や外力に対して敏感なエマルション成分の劣化や変性を抑制可能である.筆者らは,MC乳化における装置・操作因子が微小液滴のサイズに与える影響,ならびにMCアレイの表面特性およびエマルション成分が液滴作製に与える影響について論じた.静電積層法は,MC乳化によって作製された単分散水中油滴(O/W)型エマルションの安定性向上に有用な表面修飾技術である.正または負に帯電した界面活性物質を用いることにより,均一サイズの微小油滴の表面に最大で7層の被覆修飾が可能であることを紹介した.静電積層法においては,微小油滴表面のζ-電位は,被覆修飾を行うごとに反転し,最外層の帯電状態を反映している.これまでに,静電積層法によるO/Wエマルション液滴の安定性向上が可能な組み合わせが,数種類報告されている.
なお本稿は,Foods & Food Ingredients Journal of Japan(FFIジャーナル)219巻4号332~338頁(2014年)に掲載された原稿を,許可を得て,英訳したものである.

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© 2015 一般社団法人 日本食品工学会
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