ゴチュジャン(gochujang)は韓国の代表的な発酵食品である.近年,消費者の嗜好から添加物不使用の製品となり,そのためガス発生による膨れ事故が発生するようになってきている.耐塩性酵母または乳酸菌が膨れ事故の原因とされてきた.本研究では,実際の膨れ事故を生じたゴチュジャンから,各種の微生物学的試験を通して耐塩性,耐酸性でガス発生微生物を単離したが,それらは酵母や乳酸菌ではなかった.単離した微生物の16S rRNA遺伝子DNA配列からの判定ではBacillus amyloliquefaciensおよびB. licheniformisの類縁菌であった.これらで新鮮なゴチュジャンを汚染させたところ,両者からガスの発生が観測され,B. amyloliquefaciens または(and/or)B. licheniformis の類縁菌が,ゴチュジャンの“膨れ”事故の原因微生物と推定できた.