日本食品工学会誌
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原著論文
静水圧とシステイン添加によるアクリルアミドの生成抑制
小林 篤五味川 里子小黒 麻美山﨑 彬佐藤 眞治前川 博史
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2021 年 22 巻 4 号 p. 87-101

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抄録

100 MPa未満の静水圧がアクリルアミドの生成とメイラード反応に及ぼす効果を,pH 9.0の等モル濃度のアスパラギン–グルコース水溶液を用いて検討した.常圧,60または90 MPaの圧力下で70℃,72時間までの反応を行い,アクリルアミドの生成量,メラノイジンの生成量,反応後のpHを測定した.メラノイジンの生成との比較によって,アクリルアミドの生成は,圧力保持により相対的に抑制されることが明らかとなった.また,同試料にシステインを添加して90 MPaの圧力下で70℃,24時間反応させた場合,圧力保持の有無に関らず,アクリルアミド生成が著しく抑制された.上述の結果に基づいて,圧力保持とシステイン添加によるアクリルアミド生成抑制効果を,アクリルアミドを比較的多く含む黒糖(Non-centrifugal cane sugar,NCS)水溶液(pH 5.5)を用いて同様の加圧加熱反応により検証した.システイン添加は,NCS水溶液の含有するアクリルアミドを低減し,加熱反応に伴うアクリルアミド生成を抑制した.また,NCS水溶液の圧力保持はアクリルアミドの生成を促進したが,高濃度のシステイン共存下での圧力保持は,アクリルアミドの低減を促進した.これらの結果から,食品の加工で起こるアクリルアミド生成やメイラード反応は,静水圧やシステインの添加で制御できる可能性が示唆された.

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© 2021 一般社団法人 日本食品工学会
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