日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
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ISSN-L : 1345-7942
22 巻, 4 号
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原著論文
  • 小林 篤, 五味川 里子, 小黒 麻美, 山﨑 彬, 佐藤 眞治, 前川 博史
    2021 年22 巻4 号 p. 87-101
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    100 MPa未満の静水圧がアクリルアミドの生成とメイラード反応に及ぼす効果を,pH 9.0の等モル濃度のアスパラギン–グルコース水溶液を用いて検討した.常圧,60または90 MPaの圧力下で70℃,72時間までの反応を行い,アクリルアミドの生成量,メラノイジンの生成量,反応後のpHを測定した.メラノイジンの生成との比較によって,アクリルアミドの生成は,圧力保持により相対的に抑制されることが明らかとなった.また,同試料にシステインを添加して90 MPaの圧力下で70℃,24時間反応させた場合,圧力保持の有無に関らず,アクリルアミド生成が著しく抑制された.上述の結果に基づいて,圧力保持とシステイン添加によるアクリルアミド生成抑制効果を,アクリルアミドを比較的多く含む黒糖(Non-centrifugal cane sugar,NCS)水溶液(pH 5.5)を用いて同様の加圧加熱反応により検証した.システイン添加は,NCS水溶液の含有するアクリルアミドを低減し,加熱反応に伴うアクリルアミド生成を抑制した.また,NCS水溶液の圧力保持はアクリルアミドの生成を促進したが,高濃度のシステイン共存下での圧力保持は,アクリルアミドの低減を促進した.これらの結果から,食品の加工で起こるアクリルアミド生成やメイラード反応は,静水圧やシステインの添加で制御できる可能性が示唆された.

  • 黒岩 崇, 奥山 椰英子, 金澤 昭彦
    2021 年22 巻4 号 p. 105-115
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    カゼインナトリウムを乳化剤としてマイクロチャネル乳化法で調製したパーム油含有OWエマルションを用いて,半固体油脂からなる油滴の安定性に対するキトサン-カゼイン複合層の効果について検討した.パーム油の融解温度以上である60℃においてクロスフロー型および貫通型マイクロチャネルアレイデバイスを用い,平均液滴径がそれぞれ26.0および33.5μmの単分散エマルションを得た.CHI/SC比を種々変えて油滴表層にCHI-SC複合層の形成を試みたところ,CHI/SC比が0.025以下および2.5以上ではそれぞれ負および正のゼータ電位をもつ単分散油滴が得られた.これらの中間のCHI/SC比では,油滴間の激しい凝集がみられ,エマルションは多分散化した.ゼータ電位が正の値を示す条件では,油滴表層へのCHIの吸着が確認され,カチオン性のCHIと正味電荷が負となるSCの複合層の形成が示された.加熱-冷却処理および長期保存におけるCHI-SC複合層の添加効果を調べたところ,油水界面にキトサン-カゼイン複合層を形成させたエマルションでは,カゼインナトリウムのみで安定化されたエマルションと比較して次のような安定化効果が認められた.すなわち,(1)油相の融解・再固化を伴う加熱・冷却処理における合一を抑制し,エマルションから油相成分が分離しにくくする効果,および(2)室温での長期(7ヶ月)保存において油滴の合一・粗大結晶化を抑制する効果が示された.キトサンとカゼインの複合化による物理的なバリア形成および油水界面を介した物質移動の抑制に起因する結果と考えられるが,その詳細なメカニズムの解明には今後の検討が必要である.固体/半固体油脂を含むエマルション製品においては,加工時における油滴の部分合一や,流通・保存時の結晶生成が品質管理上の大きな問題となる.今回得られた知見および今後のさらなる検討により,固体/半固体油脂製品の安定性向上およびこれに付随する機能性向上に資する可食性高分子の利用技術の開発が期待される.

  • 堀内 真美, 赤地 利幸, 川上 勝, 古川 英光
    2021 年22 巻4 号 p. 119-134
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    本研究では,介護食品などに適した軟質食品について,3Dフードプリンターで造形した巨視的な3次元構造が食感に与える影響を検討した.まず,硬さの異なる2種の軟質食品を用いて3D造形を行い,造形特性を評価した.その結果,2種の軟質食品は均一化することなく造形前の物性が造形物の中でも保持されること,造形の方向が造形物の力学特性に影響することがわかった.次に,繊維構造と層構造を造形し,これらの構造に特異的な食感を発現させることができるか検証した.その結果,3Dフードプリンターでの造形により,軟らかい食品であっても,繊維構造や層構造の力学特性を再現できることが示された.さらに,これらの構造により,人が有意に識別できるレベルで繊維状や層状の食感を発現させられることがわかった.以上のことから,3Dフードプリンターで造形される巨視的な3次元構造により,軟質食品の食感を制御することができる可能性が示唆された.

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