2025 年 26 巻 2 号 p. 73-79
豆腐製造時の副産物であるおからは食品素材としての有効利用が求められている.おからの有用成分を高める方法の一つとして,乳酸菌(Lacticaseibacillus casei)によるイソフラボン配糖体からアグリコンへの変換を行った.特に,発酵の前処理として,温和なアルカリ処理によるマロニル配糖体のグルコシド配糖体への加水分解を検討した.おからをpH11.0で24時間保持することにより,全イソフラボンの86.4%がグルコシド配糖体となった.水酸化ナトリウムによりアルカリ処理を行った場合,おからの乳酸発酵後のアグリコン含量は全イソフラボンの93.3%であり,アルカリ処理を行わない場合の1.8倍に増大した.同様の結果は炭酸カリウムによるアルカリ処理によっても認められた.アルカリ前処理と乳酸菌による固体発酵は,おからのイソフラボンアグリコン含量を高めるための低コストで簡便な方法であると考えられた.