日本食品工学会誌
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解説
新しい食感の冷凍フルーツ「アヲハタ くちどけフローズン」の開発
三好 徹
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2025 年 26 巻 4 号 p. 115-120

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Abstract

日本の果物消費量は低く,日持ちしない,食べるのに手間がかかるなどが障壁となっている.従来の冷凍フルーツは,硬い食感や風味の物足りなさ,解凍時のドリップといった課題を抱えていた.当社はこれら課題解決のため,浸透圧脱水凍結法を応用した「やわらかフローズン製法」を開発し,2023年3月「アヲハタ くちどけフローズン」シリーズを発売した.本商品は冷凍庫から出してすぐに食べられるやわらかい食感と芳醇な香りを実現した.くちどけフローズンいちごの特性評価では,物性分析により従来のIQFと比較して低い破断荷重と初期弾性率を示し,よりやわらかく,なめらかな食感であることが確認された.官能評価と香気成分分析では,フルーティーで甘い香りが強く,酸臭や冷凍臭が少ないこと,ドリップ量もIQFと比べて少ないことが確認された.本技術は,従来の冷凍フルーツの課題を克服し,手軽にフルーツを摂取できる新たな選択肢を提供する.

Translated Abstract

Fruit consumption in Japan is significantly lower compared to G7 countries, particularly among young and middle-aged demographics. This is primarily due to factors such as perishability, high cost, and the effort required for preparation. Conventional frozen fruits have faced challenges with thawing, texture, and flavor. To address these issues, AOHATA Corporation developed a unique “soft-freezing method,” an application of osmo-dehydrofreezing, and launched the “Aohata Kuchidoke Frozen” series in March 2023. This product is designed for immediate consumption directly from the freezer, offering a soft texture and rich aroma without the need for thawing.

Evaluation of “Kuchidoke Frozen Strawberry” demonstrated lower breaking force and initial elastic modulus compared to conventional IQF strawberries through mechanical property analysis, confirming a softer and smoother texture. Sensory and aroma component analyses revealed a rich fruity and sweet aroma with less acid and frozen odor. Significantly less drip loss upon thawing was also observed compared to IQF. These findings indicate that “Aohata Kuchidoke Frozen” overcomes the drawbacks of traditional frozen fruits, providing a new option for easy and healthy fruit intake. This product is expected to meet the needs of modern consumers seeking health consciousness and convenience, contributing to an improved quality of dietary life.

1. 緒言

近年,日本では高齢化が進み,人々の健康に対する意識はますます高まっている.食生活指針の具体的な推進を図るため,国では「健康日本21(第三次)」や「食事バランスガイド」を策定し,果物を1日200 g摂取することを目標としている.しかしながら,日本においては「果物離れ」が指摘されており,令和5年の20歳以上平均では1日あたり92.9 gと,目標値の半分程度に留まっている.とくに20代から40代といった若年層や中年層では,50 g/日程度と著しく少ない傾向にあり [i],G7諸国と比較しても日本の果物消費は突出して少ない [ii].果物を毎日は摂らない理由としては,「値段が高いこと」に加えて「日持ちがせず買い置きができないから」「食べるまでに皮をむくなど手間がかかるから」といった理由がつづいている[iii].こうした状況の一方,冷凍食品はその利便性や魅力的な商品開発によって広く受け入れられるようになっている.国内の人口は減少傾向にあるものの,共働き世帯や単身世帯の増加などを背景に,冷凍食品の消費量は増加を示し,2014年の270.6万トンから2024年には292.5万トンへと拡大した[iv].冷凍形態のフルーツも増加しているが,従来の冷凍フルーツはそのまま喫食すると硬く,風味に物足りなさを感じるものが多い.とくにイチゴIQF (Individual Quick Frozen, 個別急速凍結品)は,硬く歯が通りにくいこと,風味の物足りなさ,酸味を強く感じる傾向や冷凍保管中に生じる独特の劣化臭(冷凍臭)があること,解凍時のドリップが多いことといった課題があった.冷凍フルーツの品目別市場シェアにおいては,ブルーベリーとマンゴーが多くを占めており,イチゴはその人気にも関わらず冷凍市場での存在感は大きくないのが現状である.

アヲハタ株式会社は「フルーツで世界の人を幸せにする」ことをビジョンに掲げ,フルーツ摂取を通した心と体の健康支援に取り組んでいる.手軽に摂取できるフルーツの新商品展開の一環として,2023年3月に「アヲハタ くちどけフローズン」シリーズを発売した(Fig. 1).前述の冷凍フルーツの課題(食感,風味,ドリップ)を改善し,解凍の手間をなくし,冷凍庫から出した直後に喫食することを想定して開発された「好きな時にすぐ食べられる」冷凍フルーツ商品である.浸透圧脱水凍結法を応用した独自の「やわらかフローズン製法」により,凍っていてもやわらかく,香りの良いフルーツを提供することを可能としている.

Fig. 1

The “Kuchidoke Frozen” products.

2. やわらかフローズン製法の開発

一般的に生鮮野菜や果物は,動物性の食品素材などと比べると水分が多いため,凍結による氷結晶生成に伴い組織が著しいダメージを受け生鮮野菜独特のテクスチャーが失われる[1].脱水凍結(Dehydrofreezing)は,予め水分を減らすことで組織への凍結ダメージを軽減させ,解凍後の品質向上に有効とされている[1,2].脱水凍結の歴史は古く,1940年代に米国農務省西部研究所で乾燥による脱水凍結法が開発された.その後,糖溶液などに浸漬する浸透圧脱水法や真空含浸を組み合わせた手法,減圧乾燥やマイクロ波減圧乾燥など,様々な脱水方法が研究され,イチゴ,リンゴ,キウイフルーツ,スイカ,キュウリなど多くの生鮮農産物で検討されている.しかし,脱水することで凍結・解凍による軟化が抑制されるものの,いずれの方法においても細胞膜の損傷に伴う弾性的性質の大幅な低下を抑えることは困難とされている[2].

当シリーズでは解凍せずに冷凍のまま喫食することを商品コンセプトとし,その際に好ましいテクスチャーや風味を感じられることを目指して研究開発を進めた.条件検討においては,事前浸漬に用いる果汁類や糖類の組成,浸漬方法(糖度,温度,時間,方式など)を変化させることで,どのように風味や食感,経済指標などに影響を与えるかを評価し,フルーツごとに最適な条件検討を行った.また,原料生産地や農産加工品製造の現場で常に課題となる果実ごとの品質バラつきや,Ready-to-Eat商品としての衛生性確保などの課題に対しては,ジャム類やフルーツ缶詰類を長年に渡り製造してきた当社の経験値やノウハウを背景に,総合的な製造管理技術を用いて解決した.本稿では,くちどけフローズンいちごの特性評価に焦点を当て詳述させていただく.

3. くちどけフローズンいちごの特性評価

3.1 食感

本商品は,冷凍庫から出した直後でも比較的軽い力で噛むことが可能な適度な硬さの食感を有する.また,室温に少し置いて喫食時の温度を上昇させると,よりなめらかな食感,生イチゴに近い食感が楽しめる.このユニークな食感特性を客観的に評価するため,圧縮破断試験を行った.試料は,イチゴIQF,くちどけフローズンいちごを用い,測定温度は冷凍庫から出した直後,および室温にて数分間置いて食べることを想定しそれぞれ -20°C,-10°Cとした.また,対照として冷蔵庫で保管した生イチゴ(6°C)の分析も行った.測定には,Stable Micro Systems社製テクスチャーアナライザーTA.XT Plusを用い,直径0.5インチ円柱状プランジャー,測定速度2 mm/s,圧縮歪率80%の条件とし,イチゴは縦に半割し,断面を下にして試料台に置き,高さの最も高い部分にプランジャーが貫入するように測定し,荷重歪率曲線を得た(Fig. 2).本評価における主要なテクスチャー特性指標は以下のとおりであり,その結果をTable 1に示す.

Fig. 2

Load-Strain curves of IQF, Kuchidoke Frozen, and fresh strawberries at various temperatures (a) at -20°C and 6°C (b) at -10°C and 6°C.

Table 1 Texture profile analysis of IQF, Kuchidoke Frozen, and fresh strawberries.


破断荷重(Breaking Force):試料が破壊する際に生じる最大の荷重であり,食品の硬さや抵抗を示す.単位 g

破断歪率(Breaking Strain):破断荷重が生じた時点での試料の変形度合い(歪み)であり,食品の脆さ,柔らかさ,弾力性の指標となる.単位 %

初期弾性率(Initial Elastic Modulus):荷重歪率曲線の初期直線領域の傾きとして算出される指標であり,食品の噛み始めの硬さを示す.本評価では歪み0 - 3%までの線形近似直線の傾きとして算出した.単位 g/%

ピーク形状:破断点前後における荷重曲線が鋭いか緩やかであるかを示し,食品の「脆さ,歯切れの良さ」「なめらかさ」など破壊時の食感特性に影響を与える.

破断後の荷重変化:破断点以降の荷重曲線が急激に,あるいは徐々に変化するかといった傾向を確認する.食品の口中での「なめらかさ」「口どけの良さ」といった食感変化の特性と関連性がある.

3.1.1 -20°Cでの比較

イチゴIQFの荷重歪率曲線は,高い破断荷重(21605 g)と低い破断歪率(14%)を示し,鋭いピークが特徴的であった.初期弾性率も非常に高く,これは初期の小さな変形に対しても高い抵抗性をもつことを示唆している.この結果は,「硬くて脆い」という官能評価とよく一致し,硬い噛み始めと同時に一気に破壊される特性を物理的に裏付ける.

一方,くちどけフローズンの曲線は,イチゴIQFの約6割に相当する比較的低い破断荷重(12556 g)と,高い破断歪率(21%)を示した.ピークは緩やかであり,破断後も荷重が徐々に減少する挙動が確認された.初期弾性率はイチゴIQFと比較して低く,初期の変形に対する抵抗が小さいことが示された.これは本商品の「やわらかく,しっとり」した食感を裏付けている.低い初期抵抗,比較的少ない力での破壊,破壊後も粘性的な特性が食感に反映されていると考えられる.

両者を比較すると力学物性において明確な違いが確認された.イチゴIQFは高い初期弾性率を有し,最大の力に到達すると一気に構造が破壊される脆性的な特性をもつ.これに対してくちどけフローズンは,低い初期弾性率から始まり,より大きな変形を伴いながら比較的少ない力で破壊され,破壊後も粘性的な特徴を示し,この特性は官能評価結果と対応している.

6°Cにおける生イチゴでは最初のピーク点(破断荷重 2278 g,破断歪率 26%)を破断点と定義した.冷凍イチゴの破断特性と比較すると,最も小さい破断荷重と初期弾性率,そして最も緩やかなピーク形状を示し,ピークを過ぎての荷重の減少も最もなだらかであった.これは生イチゴの噛み始めから破壊までの抵抗が最も小さく,表面の破壊後にも口中で食感が継続することを示唆している.

3.1.2 -10°Cでの比較

室温に少し置いたときの食感を想定した-10°Cにおける測定では,いずれも破断荷重および初期弾性率の低下が確認された.これは,噛み始めから破壊までの抵抗が減少し,両者が噛みやすくなったことを示唆する.ピーク形状は両者ともなだらかになる傾向を示したが,イチゴIQFにおいてはくちどけフローズンと比較すると依然として脆性的な特徴が認められた.くちどけフローズンでは,破断歪率が26%に増加し,破断後の緩やかな荷重減少が続き,その食感特性が生イチゴに近づいていると考えられる(Fig. 2 (b)).

3.2 風味

イチゴの香りを特徴づける主要な成分はエステル類であり,新鮮なイチゴにおいて重要な揮発性物質である.従来の冷凍イチゴ(IQF)では,冷凍保管中にこれらのエステル類が著しく減少することや,その他の揮発性物質とのバランスが崩れることなどにより,風味が物足りなく感じること,また独特の冷凍臭があることなどが課題であった [3,4].本商品は独自の製法により,冷凍で喫食した際にも芳醇なイチゴらしい香りが感じられる.その風味特性を評価するため,官能評価および香気成分分析を実施した.

官能評価は,20代から50代の男女7人の分析型パネルで実施し,その平均点を算出した.「果実様(フルーティー),酸臭,グリーン,甘い,冷凍臭」の香りの特徴について,5段階で評価した.その結果,くちどけフローズンでは,イチゴIQFと比較して果実様(フルーティー)および甘い風味を強く感じる傾向となり,課題とされていた酸臭,グリーン臭,冷凍臭は弱い傾向となった(Fig. 3).

Fig. 3

Sensory profile of IQF and Kuchidoke Frozen strawberries.

次に,香気成分分析は以下の通り実施した.サンプルをホモジナイズし,固相抽出法によって成分を抽出することで測定試料を作製した.試料をGC/MS(GCMS-QP2010 (島津製作所製)),カラムDB-WAX,初温40°Cで10分保持,3.0°C/分で220°Cまで昇温し15分保持,10°C/分で245°Cまで昇温し,20分保持する温度プログラムによって分析し,ターゲットイオン面積を用い,内標との相対濃度として算出した.

分析の結果より,イチゴに特徴的な香気成分濃度を比較した.くちどけフローズンいちごはイチゴIQFと比較し,ヘキサン酸エチル(パイナップルやリンゴのような甘くフルーティーな香り),2-メチルブタン酸エチル(リンゴやブドウのようなフルーティーな香り)が多く含まれることが確認された (Fig. 4).また,2-メチルブタン酸(チーズや汗のような香り,酸っぱい香り)はその含有量が少ないことが示された (Fig. 5).これらの分析結果は,本商品において果実様(フルーティー)および甘い風味は強く,一方,酸臭は弱く感じられる傾向であることを裏付け,冷凍イチゴでありながらイチゴのフルーティーで甘く芳醇な香りを感じられることが確認された.

Fig. 4

Concentration of Ethyl Hexanoate and Ethyl 2-Methylbutanoate in IQF and Kuchidoke Frozen strawberries.

Fig. 5

Concentration of 2-Methylbutanoic acid in IQF and Kuchidoke Frozen strawberries.

3.3 ドリップ

冷凍イチゴのドリップ流出とは,凍結および冷凍保管中に破壊された細胞組織から,解凍時に水分が流出する現象である.このドリップ量は品種によって差があり,イチゴの細胞壁を構成するペクチンの特性と関連があることが確認されている .とくに4°Cなど低温での解凍時には,塩酸可溶性ペクチン(HSP)の量が多いほどドリップ流出が抑制されるという強い相関関係も報告されている[5].このように,ドリップ量は品種で規定されるペクチン特性などの細胞構造に由来すると考えられるため,そのコントロールは困難である.

「くちどけフローズンいちご」では浸透圧脱水凍結法を応用した独自の「やわらかフローズン製法」を適用することで,ドリップ量が従来のIQFと比較して明らかに低減されることが確認された(Fig. 6, Fig. 7).Fig. 7に示したドリップ率(Drip Loss(%))は,冷凍状態のイチゴを皿に載せカバーをし,冷蔵庫(5°C)で24時間放置した後,発生したドリップ重量を測定し,その値を解凍前の初期重量で除して100を乗じて算出したものである(=(ドリップ量 / 初期重量)×100) .くちどけフローズンのドリップ率(8.5%)は,同品種のイチゴ IQF(19.4%)と比較して有意に低く,半分以下にとどまっている.

Fig. 6

Comparison of drip loss between IQF (a) and Kuchidoke Frozen (b) strawberries after 24 hours at 5°C.

Fig. 7

Drip loss comparison between IQF and Kuchidoke Frozen strawberries after 24 hours at 5°C.

本製法における凍結前の浸漬工程では,浸透圧作用により果実組織中の自由水の一部が脱水され,ドリップとして流出する水分総量が低減される.これは実際に浸漬前後の果実重量の比較により確認できる.さらに脱水により氷結晶の成長が抑制され,凍結・冷凍保管中における細胞組織への物理的な損傷が軽減されていると考えられる.これらの要因によりドリップ流出が抑制され,イチゴIQFとの間でドリップ発生量に明確な差が生じたものと推察される.

ドリップ流出はイチゴ品種固有の特性に強く影響される課題とされるが,本製法(浸透圧脱水凍結法)の適用により,同品種IQFと比較してドリップ流出を低減することが確認された.この特性を活かし,ケーキやデザートへのトッピングなど,幅広い用途での利用が期待される.

4. おわりに

「アヲハタ くちどけフローズン」は,独自の「やわらかフローズン製法」により,従来の冷凍フルーツが抱えていた課題を解消し,冷凍庫から出してそのまま食べられるやわらかい食感,自然な甘さと果実本来の芳醇な香り,そして少ないドリップを実現した.ジャムやフルーツ缶詰製造などを通じて当社でこれまで培った製造技術や知見,経験を,冷凍技術に活かすことでユニークな商品開発に繋がったものと考えている.今後,この特性の背景にあるメカニズムなどの深掘りと原理に基づく応用開発を進め,一層の商品価値の向上に努めたい.本商品シリーズが健康志向と便利さを求める消費者にとって,より手軽にフルーツを楽しめる新たな選択肢となり,食生活の質の向上に貢献できるよう尽力していきたい.

5. 謝辞

本研究にあたり,様々な形でご尽力いただきました社外および社内の多くの関係者の皆様に,心より感謝申し上げます.とくに,サンプル作成,データ取得,考察にご協力いただきましたアヲハタ株式会社研究開発本部の髙木純理,小田久美子,安藤佐紀子,湯川寛子,杉野茜音の各氏に,感謝と御礼を申し上げます.

URLs cited

i) Ministry of Health, Labour and Welfare. National health and nutrition survey, 2023. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r5-houkoku_00001.html (Jul. 1, 2025)

ii) Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO). FAOSTAT. https://data.un.org/Data.aspx?q=wine&d=FAO&f=itemCode%3A2919 (Data for 2019, Jul. 1, 2025)

iii) Japan Fruit Association. Report on the survey of fruit consumption, 2024. https://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kokunai/r06chosa_siryo/r06shohi.pdf (Jul. 1, 2025)

iv) Japan Frozen Food Association. https://www.reishokukyo.or.jp/ (Jul. 1, 2025)

References
 
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