日本食品工学会誌
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食品製造プロセスにおけるタンパク性汚れの付着と洗浄に関する基盤的研究
中西 一弘
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2006 年 7 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

食品製造プロセスにおいては, 原料や製品である食品が装置壁面に残留物 (汚れ) として付着する.このような汚れの装置壁面への付着は, 微生物汚染をもたらし装置の衛生状態を損しめるだけではなく, 熱交換器などの装置機能を著しく低下させるので, 製造終了後に実施する洗浄操作は極めて重要である.しかし, 実際の現場では未だに経験に基づいて行われている面が大きい.一方, 基礎的な立場からは, 固体表面上に発生する汚れの付着と洗浄の問題は, 分子間相互作用, 移動現象, 化学反応などが複雑に絡み合った工学基礎の課題であり, 食品化学工学者が是非にでも取り組むべき重要な課題である.筆者は, ドイツミュンヘン工科大学の (故) Kessler教授の研究所で行った膜洗浄の研究を端緒として, 20年以上にわたり食品汚れ成分の金属表面への付着と脱離に関する基礎的研究を行ってきた.とくに, タンパク性汚れは, 金属表面に対して強い付着の相互作用を示し, 洗浄が困難である点に着目して, タンパク質の付着機構をその構成成分であるペプチド, アミノ酸分子がもつ官能基のカルボキシル基, アミノ基と表面との間の相互作用およびタンパク質の付着に伴う構造変化などの観点から考察した.さらに, 種々の洗浄方法に対する速度論的取り扱いを示すとともに, 新規ラジカル洗浄法の特性について紹介した.

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