日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
ISSN-L : 1345-7942
酸耐性凝集性酵母を用いた食品ゴミからの繰り返し回分エタノール発酵
馬 克東脇坂 港木内 崇文プラニートラッタナノン スタシニー森村 茂木田 健次白井 義人
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 8 巻 4 号 p. 275-280

詳細
抄録

地球温暖化対策と枯渇性化石資源代替の観点から, バイオマス由来の自動車用燃料製造に, 近年世界的関心が急騰している.ガソリン代替としてのエタノールにせよ, 軽油代替のバイオディーゼルにせよ, バイオマス由来の自動車用燃料製造において, 持続可能性の見地が重要となる.すなわち, エタノール製造におけるトウモロコシやサトウキビ, またバイオディーゼルにおける油ヤシなど原料作物と食糧との競合, あるいは需要増に対応する土地利用変化による生物多様性の減少などの問題が指摘される.また, 発酵原料化が期待される木質系バイオマスについては, 前処理に要する投入エネルギー削減, 五炭糖の利用に関する技術的課題の克服が必要な状況にある.
著者らは, 炭素源やその他栄養源が豊富に含まれる食品廃棄物を発酵原料とする資源化プロセス, すなわちバイオマスプラスチックであるポリ乳酸やポリブチルコハク酸の原料となる有機酸の発酵法による製造を報告してきた.
さらに, 再生可能エネルギーであるバイオ燃料を, 食品廃棄物を原料として, ATCC株のエタノール発酵により製造するプロセスを, ビーカースケールで詳細に検討し, 良好な発酵原料足り得ることを先に報告した.本研究では, スケールアップを念頭に, 生産性向上の観点から, 耐酸性を示す凝集性酵母ATCC26602株の繰り返し回分培養の比較検討を行った.
食品ゴミを培地とするエタノール発酵の際に, 耐酸性の凝集性酵母ATCC26602株を用いて, コンタミネーションや生産性の低下なく11日間20サイクルに及ぶ繰り返し回分培養に成功した.凝集性酵母ATCC26602株において3.79/L/hの生産性を示した.
耐酸性の凝集性酵母を用いた繰り返し回分培養により, 食品ゴミを基質として, 無滅菌条件下でも高い生産性で培養可能であることはコスト削減の観点から, 食品廃棄物からエタノールの商業生産に大きな展望を拓くものである.今後は, 商業生産に向けたプロセス検討とスケールアップ実証研究について報告する予定である.

著者関連情報
© 日本食品工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top