食品と微生物
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食鳥肉の微生物汚染制御対策と保存効果について
渡邊 昭宣
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1990 年 7 巻 1 号 p. 33-41

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抄録

食鳥処理場における冷却工程での微生物制御について検討し, 以下の結果を得た.
1) 手羽先汚染サルモネラに対する冷却水中でのNaClOの殺菌作用は, 濃度100ppmで, pH 5.0のとき, 作用時間15分間で, 対照汚染菌量に対し102オーダーの菌量が減少したが, 30分間後でも不検出とはならなかった. また, 同じ濃度でもpHが6.0以上のときには有効に作用しなかった.
2) ClO2について同様の実験を行ったところ, NaClOの100ppmと同結果が得られた濃度は10-25ppmで, 作用時間15分間以上の場合にpHは8.0以下で同じ結果を得た.
3) 手羽先の初期サルモネラ汚染菌量とNaClO及びClO2の殺菌効果の関係をみると, NaClOの100ppm及びClO2の25ppmでpHが5.0のとき, 作用時間が30分間で初期汚染菌量106/mlの場合は103/ml個台まで減少し, 104/ml汚染菌量の場合は101/ml個台まで減少した. しかし, 汚染菌量が少ない102/mlのときはNaClOでは5分間の作用で, ClO2では1分間の作用で検出されなくなった. このことから, 食鳥と体における微生物汚染菌量は103/ml個台以下に制御しておかなければ, 塩素剤による効果は期待できないことがわかった.
4) 冷却工程における微生物制御対策の導入と食鳥と体の保存効果の関係をみると, 対策には, NaClO 100ppm, 混合有機酸によるpH 5.0に調整された冷却水で30分間処理された場合が, 他の対策法に比べて一般細菌数及び大腸菌群とも54時間の冷蔵保存で減少率が最も高く, 保存効果が認められた.
5) 冷却工程における微生物制御対策の導入による食鳥と体からのドリップ量を経時的に計測すると, 最も少なかったのは混合有機酸によるpH 4.3冷却水処理であったが, 食鳥肉に官能異常も認められることを配慮すると, NaClO 100ppm+混合有機酸でpH 5.0に調整した冷却水処理がドリップ量も少なく, 官能的にも肉質に異常が認められなかった.

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