日本食品微生物学会雑誌
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腸管出血性大腸菌O157およびサルモネラ汚染種子における保存期間での菌の生存とその発芽野菜における汚染
工藤 由起子渡井 正俊丹野 憲二砂田 亜津子斉藤 典子熊谷 進小沼 博隆
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2004 年 21 巻 1 号 p. 14-22

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抄録

カイワレ大根, クレスおよびアルファルファの種子を腸管出血性大腸菌O157 (以下O157) またはサルモネラで汚染した後に4℃で8ヵ月間保存した.種子10g当たり104cfuで汚染した場合, サルモネラは全種類の種子において, O157はクレスにおいて8ヵ月間汚染が維持された.これらの種子が発芽したときの可食部からは高菌数の汚染菌が検出された.また, 種子10g当たり102cfuで汚染した場合, O157は保存の間にカイワレ大根およびアルファルファにおいて著しく菌数が減少しほとんど検出限界以下に至ったが, 発芽時には菌が増殖し可食部から菌が検出された.サルモネラは8ヵ月まで保存種子から検出され, 発芽時には可食部から高菌数の汚染菌が検出された.これらのことから, O157およびサルモネラは汚染種子において長期間生存することが可能であり, その種子からの発芽野菜は汚染されていることが示された.さらに, O157およびサルモネラは種子の浸漬水中において増殖した.電子顕微鏡下での観察によって短時間の浸漬によって種子表面の物質が除去されていることが認められ, この物質は主に糖質であることが分析によって判明した.これらのことから, 種子の発芽における菌の増殖には種子の表面の糖質が関与していることが示された.

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